2014年06月26日

自分たちのサッカーという幻想  2敗1分けという現実

2014年6月25日、日本代表はグループリーグ2敗1分けという成績で、ブラジルの地を去る事になった。

選手の多くは欧州のクラブに所属し、ビッグクラブと呼ばれるチームに所属する選手も数名いる。以前では考えられない、過去最強の日本代表という呼び声高いチームだった。

実際、W杯直前までのパフォーマンスには素晴らしいものがあり、W杯出場を世界で1番に決め、テストマッチでは、オランダ・ベルギー・フランス・イタリアなどのFIFAランク上位の強国と互角以上にやりあい、直前合宿でのテストマッチでもW杯出場国のコスタリカに3−1で勝利。仮想コートジボアールのザンビアに4−3で勝利など上々のパフォーマンスを見せていた。
当然目標はグループリーグ突破、前回大会以上のベスト8が現実的な目標となる。しかし、本戦に入り状況は一変する事となる。

■ドイツW杯との類似点

初戦のコートジボアール戦、本田の豪快なゴールが決まり日本は先制した。
ゲームの入り方を観た感想としては、選手の動きが重く、パススピードも遅いと感じていた。これは苦戦しそうだなと思ったが、予想外の日本の先制で、自分の思い違いかなと安堵していた。
初戦は絶対に負けられない試合なので、これは良いスタートだなと思ったが、しかし後半コートジボアールの怒涛の攻撃で日本は逆転され初戦を落としてしまった。

初戦を落とした日本代表は、2戦目のギリシャ戦で勝利を目指したが、ボール試合率で70%近くを記録するが、一人退場したギリシャの守備を崩せず0−0の引き分け。

勝利が絶対条件のコロンビア戦で、すでに決勝トーナメント進出を決めメンバー8人を入れ替えてきたコロンビア相手に1−4で大敗してしまった。

この3戦の中でもっとも問題だったのは、コートジボアール戦での点の取られ方で、ドログバ投入からチームが混乱、わずか2分の間に、まったく同じパターンで2失点を喫して逆転されてしまったところだ。

この展開を見てドイツW杯のオーストラリア戦を思い出したのは私だけではないだろう。

中田英寿、中村俊輔という欧州で活躍する選手に、小野伸二などの黄金世代を擁し、最強の日本代表と呼ばれたあのチームがどの様な形でドイツを去ったか、サッカーファンなら忘れる事はできない。

ドイツを戦ったジーコジャパンも、攻撃サッカーを志向する点でザックの作ったチームに似ている点が多々ある。

中田・中村という二枚看板が攻撃を担い、小野、稲本、高原、小笠原などの黄金世代といわれる実績のあるスター選手が揃っていたジーコジャパンと、本田、香川というスター選手に欧州クラブに所属する多数の選手が揃ったザックジャパンは似てはいないだろうか?

また、日韓W杯と南アフリカW杯ではベンチメンバーにベテラン選手をあえて入れていたが、ジーコとザックはベテランを選ばなかった点も似ている。

W杯直前のテストマッチまでは強豪ドイツと引き分けるなど好成績だったが、本戦に入って失速し、初戦のオーストラリア戦で先制しながら、わずか5分の間に2失点し逆転負け、2戦目のクロアチアにスコアレスドロー、3戦目のブラジル戦で1−4大敗で2敗1分けでドイツを去ったところもそっくりだ。

■南アフリカW杯との違い

4年前の南アフリカ大会でベスト16までいったチームから、4年かけて強化したチームはなぜ前回大会を上まわれなかったのか?

ドイツ大敗の反省から、Jリーグジェフを強豪に押し上げた名将イビチャ・オシムを監督に迎えスタートした南アフリカ大会の日本代表も、攻撃を志向するチームではあったが、ジーコ時代の選手のイマジネーションに頼る不確実なサッカーから、全員が走りながら考えるというフィジカルをベースにしながら日本人の特徴に合ったチーム作りを進めていた。
しかし、オシムの病気退任により、後任をフランスW杯監督を務めた岡田武史とし再スタートを切るトラブルがあり厳しい船出となった。

岡田ジャパンもW直前までは攻撃的なスタイルで勝利を目指したが、本戦直前のテストマッチで結果が出ず、現実路線に修正し守備的戦術で本戦を戦うことを決意、結果ベスト16という成績を得ることに成功した。

しかし結果は出たものの、選手たちは、”攻撃的にやったらどの程度やれるのか?”を知りたいという欲求を強くもっていた。これについては過去のチームでも同じジレンマを抱えており、マイアミの奇跡のアトランタ五輪の西野ジャパン、北京五輪の反町ジャパン、日韓のトルシエジャパンの時も同じような感情を一部の選手が語っていた事は新聞・雑誌の取材などでも語られている。

多くの選手が欧州クラブに所属して、個々に自信をつけてきた今だからこそ、攻撃的なチームでブラジルW杯を戦うことは必然だったのだろう。

■なぜ結果が出なかったのか?

ではなぜ今回のチームは望んだ結果を出せなかったのだろうか?

私が思うには、全ての想定が甘かった事が一番の原因ではないかと思っている。
対戦相手の強さ、ブラジルの気候、ピッチコンディション、自分たちのパフォーマンス、W杯という真剣勝負の厳しさ、”自分たちのサッカー”への過信。

”自分たちのサッカー”が出来れば結果は出ると、私たちファンでさえも思っていたのだから本人たちはそれ以上に信じていたに違いない。本田、長友などは優勝まで公言していたのだから、日本代表が世界の強豪国と互角にやれると思っていたのだろう。
実際彼らは、それぞれのクラブで日常的に代表クラスの選手たちと戦い、その実力の差を感じられる環境にいる。

W杯本戦までの日本代表の戦いぶりも、良いときは本当に素晴らしいサッカーで世界に賞賛されるサッカーが出来ていた。
攻撃サッカーを身上とするだけに、2点取られても、3点取れるチームであり、実際に結果も残してきた。しかし、その影でうまくいかなかった試合の事をないがしろにしていなかっただろうか?。

親善試合、コンフェデレーションズカップでブラジルに大敗したこと。イタリアと良い勝負(4−3で敗戦)をした後でメキシコに勝てなかった事。欧州の中堅国セルビア、ベラルーシに負けたこと。アジア予選で引いた相手の守備を崩せなかった事・・。

最強の日本代表といわれても、解決されない問題点はいくつもあったのだ。
毎試合のように得点を奪われる守備陣や、引いて守られたら得点を奪う方法を持たない攻撃陣。
作り出した決定機の数に対する得点の少なさ。
セットプレーからの得点の少なさと、相手のセットプレーからの失点の多さ。

今回の2敗1分けという結果は、これらの悪い点を解決してこなかった事による、必然だったのかもしれない。

■残る疑問

私には今回の大会において疑問として残る部分がいくつかある。

@なぜFWのファーストチョイスは大迫だったのか?
Aなぜ遠藤は最後までジョーカーだったのか?
Bなぜギリシャ戦でパワープレーを選択したのか?
Cなぜギリシャ戦で香川は先発から外されたのか?
Dなぜ大久保がチームの軸の様な扱いになったのか?


4年間の集大成として望んだ大会で誰がスタメンで起用されるかは重要だ。特に初戦の重要度はこれが全てといえるほどだろう。その試合で先発に選ばれたFWは大迫だった。

大迫の特徴はオールマイティに全てをこなす器用さにあると私は思うのだが、少し慎重すぎる人選ではなかったか?
ボランチが山口・長谷部、DFに今野ではなく森重というのも攻撃を売りにするチームとしては消極的に映る。

このいつもとは違う違和感が、チームの勢いを殺した要因のひとつではないだろうか?

遠藤をジョーカーとして使う戦略は、いままで何度か成功しているので大きな問題には映らないが、このチームの心臓ともいえる選手を、ギリシャ戦の様な守備的なチームでかつ、負けられない試合で先発で使わないという選択は理解しにくい。

また、初戦の出来が悪かったとはいえ香川のような特別な選手をスタートから使わない選択も分からない。香川のような選手は常に相手にとっては脅威であり、この選択が相手に余裕を与えた事は予想できる。
そのギリシャ戦も、10人になった相手の守備を崩せず最後は吉田を前線に残すパワープレーに終始。日本代表は今までパワープレーで結果を残したことはほとんど無いチームであり、パワープレーを選択するのであればなぜ鳥栖の豊田をメンバーに入れなかったのか?非常にチグハグで納得のいかない選択だった。

そして大久保の扱いについてだが、確かに大久保個人の働きは良いものがあった。Jリーグ得点王としての能力は疑い様の無いものだし、今回出場した試合では危険な場面を何度か作り出していた。しかしまずは4年間かけて作ってきたチームがあり、その集大成としての大会なのだから、もっとも良いコンビネーションを出せるメンバー構成、ポジションで行うゲームが観たかったというのが本音だ。

大久保が入ることで岡崎が慣れない左に入ったりすることが、このチームの最大のパフォーマンスを出すことになるとは思えないのだ。

■自分たちのサッカーという幻想

選手たちが口々に言っていた「自分たちのサッカー」とは、その悪い部分に目をつぶって、良い部分しか見ない事と同義だった。

サッカーという相手のある戦いで、互いに相手の良さを消し合う戦いで、「自分たちのサッカー」を自由に表現することが困難であることを忘れてしまったツケを今回は払わされてしまったのだ。

「自分たちのサッカー」とは「日本人の能力を最大限に発揮できるサッカー」と言う意味だ。これを目指すことは間違いではない。しかし今回のように「自分たちのサッカー」=「自分たちのやりたいサッカー」ではダメなのだ。

いつの時代の代表でも、理想を追う攻撃陣と、現実的な守備陣のバランスの上に成り立っている。しかし日本のマスコミが作り出す”スターシステム”では本田の様な多くを語るスターが必要になり、その発言力はチームの方向性にも影響するほどになっている。

本田の語る理想が、選手の個の力を上げ、日本代表の攻撃力を上げたことを否定はしない。しかし、一選手の理想が「自分たちのサッカー」として扱われてしまう現状は正しい状態ではないだろう。

多くの選手が嫌った、岡田ジャパンの守備戦術も、規律や適応力の高い日本人に合ったサッカーであり、そう言う意味では「日本人の能力を最大限に発揮できるサッカー」だったと言える。

つまり自分たちに合うサッカーが、自分たちが楽しいサッカーだけとは限らないのだ。


日本代表として戦うことは、勝利を目指す事である。ザックと一緒に作り上げた攻撃サッカーもあと少し足りないところを補えば完成に近づくのかもしれない。しかし、試合の中でうまくいかない事はこれからも起こるだろう。そんな時、理想としているスタイルを捨てて、勝利のためなら、ためらいなく守備的システムに切り替える。きれいに繋げないなら泥臭く貪欲に得点を狙う。相手の流れなら相手の嫌がることをやったり、ファールをもらったり、プレーを遅らせて一時的にゲームを壊す。そしてただ勝利だけ目指す。そんな勝負強くしたたかな日本代表になってほしい。

やはり自分たちの代表が勝つところが私たちは見たいのだ。



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posted by Ryon at 22:31| Comment(7) | TrackBack(0) | 日本代表2014 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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