2006年07月05日

新しい時代の始まり 〜中田英寿引退に思う〜

日本サッカーとW杯の歴史は、中田英寿という選手と共にあったといっても過言ではない。

中田以前の日本代表は、技術・戦術よりも気持ちで戦うようなチームだったが(サッカーだけではなく、その他のスポーツも概ね同じような感じだったとは思うが・・・)、中田という優れた技術、広い視野を持つ選手の出現により、日本サッカーは1段高いレベルに到達したといえる。

フランスW杯を目指したチームには、名波のような技術的に優れた選手もいたが、世界と戦った経験という面では(監督を含めて)中田以上の選手はいなかった。

各年代で代表に選ばれ、その世界大会である程度の結果を残してきた中田にとっては、W杯も特別なものではなかったし、出場しなければならない大会という位置づけだったはずだ。

中田が日本にとって特別な選手だということは、その後のキャリアを見れば明らかだ。

当時、日本最高の選手だったカズでさえも、全く結果を残せなかったセリエAで、すぐさまチームの中心選手となり、ビッグクラブへの移籍、スクデッドの獲得、エースナンバー10を与えられ期待される選手へとステップアップしていった。

その後は、監督との不仲や戦術的な問題などもあり、徐々にパフォーマンスを落としていったが、それでも、日本代表に戻れば、どの選手よりも優れたパフォーマンスを見せ続けた。

加茂、岡田、トルシエ、ジーコと監督が替わり、目指すサッカーも少しずつ変わったが、いつでも日本代表の中心は中田だった。

技術、展開力などで、中田以上の才能を持つ選手も何人か現れ、期待されたが、それらの選手も最後まで中田を超えることは出来なかった。

いや、実際には中田を凌駕している部分はあったし、環境さえ整えば中田以上のパフォーマンスを発揮することも夢ではなかっただろう。

だが、中田にはあって、他の選手にはなかったものがあり、それ故に、中田はチームの中心となり続けた。

それが、精神力であり、一切の妥協を許さないプロフェッショナリズムだった。

W杯を目指す戦いは、いつでも真剣勝負だ。そこは甘えが許されない、世界一過酷な戦いでもある。

本来であれば、その厳しい戦いに挑む為には、細心の注意を払い、最高の準備をしなければならないはずだ。しかし、日本という国は、まだその為の経験も覚悟も足りなかったと思う。

そんな国で結果を出すためには、誰かがその足りないところを補わなければならず、その覚悟をもって戦っていくためには、チームの足りない部分を自己犠牲の精神で埋める事が必要だった。

本来であれば、経験のある指導者がその術を知っていて、選手に負担をかけずに済む方法をとる事も可能だったろう。選手は自国からしか選べないが、監督やスタッフは世界中から者を選ぶことも可能なのだから。

だが、日本は間違えに気付くことなくドイツまでの4年を過ごしてしまった。その結果、全ての問題は選手が解決しなければならない状況となり、もっとも経験がある中田がこの状況を打開する責任を負ったのだろう。

しかし、この状況こそがチームの一体感を奪い、最後まで一つになれない状況を作っていったのではないだろうか。

他の強豪国と戦うための戦略を持たない日本というチームは、次第に気持ちで戦う事にしか活路を見いだせなくなっていった。
その中心選手である中田も、同じように「方法ではなく勝つことが大切」というような、なかば投げやりとも取れるような発言を繰り返すようになっていった。

国を代表するチームが、一番大切な戦いの最中にどう戦ったらよいのかわからないようでは、勝ち目はないだろう。

中田が一選手以上の責任を感じ始めた時点で、このチームは終わっていたのかもしれない。


ドイツW杯惨敗、そして中田の引退により日本代表は新しい道を作りながら進まなければならなくなった。しかし、これは幸先の悪い始まりではない様に思う。

中田の存在と共にあったW杯は最悪の結果を持って終わってしまったが、それ故に0からの新しいチャレンジが出来る環境が整ったとも言える。

オシムと共に始まる新生日本代表は、ここまでの4年間とは違う道を進んで行くだろう。今度こそチームとして機能する日本代表が見られるはずだ。

中田の苦悩を無駄にしてはいけない。

NAKATA 1998-2005 ~ 中田英寿 イタリア セリエAの7年間 ~NAKATA 1998-2005 ~ 中田英寿 イタリア セリエAの7年間 ~
中田 英寿

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posted by Ryon at 01:42| Comment(0) | TrackBack(1) | プレーヤー2006 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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